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ソフトバンクGの修正申告はなんだったのか

今日も一を足してく!

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先日、ソフトバンクGが修正申告したという以下の記事が出ておりました。

内容を抜粋すると以下の通り。

SBGは16年にアーム社を約3.3兆円で買収。18年3月期にアーム株の一部を「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)に現物出資の形で移管した。 SBGは18年3月期の税務申告で、SVFへの一部移管に伴ってアーム株の取得価格と時価評価額の差額分などで2兆円超の税務上の欠損金が発生したとしていた。 東京国税局はこのうち約4千億円について18年3月期には計上できず申告漏れに当たるとし、SBGは修正申告した。19年3月期の欠損金として処理するとみられる。

これを見てもピンときませんでした…

「なんで現物出資で期ずれっていう話になるのか…」

18年3月期には計上できずに19年3月期に処理するということはいわゆる「期ずれ」ということになります。

期ずれとは、法人税法上の益金や損金の計上時期が異なっている、ということです。 わかりやすい例でいうと、18年3月期の売上を18年3月期ではなく、19年3月期に計上しているようなケースです。 通算してみると金額に変わりはありませんが、税務署は細かく指摘してきます。

現物出資とは?

次に「現物出資」についてです。 一般的には、「出資」というと現金などの金銭で行います。 しかし、金銭以外の土地や有価証券などの資産を出資することができます。

今回のケースだとアーム社の株式をSVFに出資した、ということになります。

この現物出資の税務上の取り扱いは様々な要件によって異なりますが、ざっくり言うと以下の分類と取扱いになります。

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ソフトバンクGのIRを見るとSVFへの出資割合は33.6%のようなので確かに非適格現物出資なんだと思います。 なので、アーム株を時価で譲渡したものとして譲渡損が計上されて、結果的に欠損金が生じるのはわかります。

だからこそ、なんで期ずれなの? 2回に分けて現物出資を行っており、1回目は18年3月、2回目は19年3月期に行ったということでしょうか。

税務上の規定では、現物出資にかかるもので期ずれになるようなものは思い浮かびません…

詳細はソフトバンクGからの開示を待つとしましょう~

ソフトバンクGの税負担

よくソフトバンクGの税負担が低くておかしい!という声を聞きます。 ちょっと19年3月期のソフトバンクGの有報を見てみましょう。

税引前当期純利益:1,980,425百万円 法人税、住民税及び事業税:5百万円

これだけ見ると税負担はほぼほぼないですね笑

しかし、よくよく見てみますと「関係会社受取配当金:2,069,783百万円」とあります。 つまり、税引前当期純利益のほとんどが関係会社受取配当金で構成されています。

実は法人税法上は、100%支配関係がある法人からの配当金は益金の額に算入されないので、所得にならないのです! 100%の支配関係でも配当金の一部が益金の額に算入されません。

これは、法人税の二重課税を排除するためです。 子会社が稼いだ利益に対して法人税が課されます。 その子会社からの配当金にも法人税が課されると二重課税になりますよね。 そのために配当金を益金の額に算入しない制度があるのです。 これを「受取配当等の益金不算入」といいます。

したがって、ソフトバンクGのような持株会社は所得が低くなる傾向にあります。

会計上の利益と税務上の所得は異なるので、財務諸表だけ見ると税負担が著しく低く見えるのです。 また、財務諸表は開示されますが、確定申告書は開示されないので詳細は謎に包まれたままですね。

税金については、会計上の数字を基礎としつつ税務上の論点も考慮する必要があります。 有報だけで判断しないようにしましょう。

それでは、読んでいただきありがとうございました。